あずきう〜まん

スケオタ 万年初心者スケーター

父の翼を身につけて〜父子鷹の旅はこれからだ!

日刊スポーツさんの記事に載った写真です。

 

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https://www.nikkansports.com/m/sports/news/amp/202104010001131.html

 

世界選手権2021

本当にこんなに待ちに待った試合があったでしょうか?

前代未聞のパンデミックの中

シーズン最初で最後の正式な国際大会となったこの大会

すべての選手が様々な制約を受けてきたはずです。

どん底を味わったのは一人ではありませんよね。

 

マスコミはこぞって世界チャンピオンとオリンピックチャンピオンの一騎打ちと謳いもりあげました。

 

まあ、それはいいでしょう。

試合がなかったのですから、実績のある選手に期待が高まるのは自然なことでしょうから。

 

ネイサン・チェンは

揺ぎなき王者であることをまざまざと見せつけてくれました!

小憎らしいほどに、すべてのジャンプやエレメンツを完璧にこなしました。

SPの4Lzの転倒以外に、非の打ち所がありませんでしたね。

FSで、すべてのジャンプをこなしたあとのあの情熱的なステップは

まさにコロナを蹴散らしてくれるヒーローのようでもありました。

 

さらに

ネイサンのあの演技のあとに

ひょうひょうとした様子で17歳の少年は

観客のいない、しかし、かつてないほどの注目を集めた世界大会のリンクで美しく力強い堂々とした演技を披露したのでした。

 

SPで、ほぼ完璧な演技をしたとはいえ

二人の王者に挟まれての演技

とてつもない精神力を見せましたね。

 

全日本では

これまた日本の二大巨頭に挟まれ

明らかに緊張を見せながらも大健闘だった少年は

 

わずか3ヶ月で

平然と世界の2番手につけてきたのです。

 

キス&クライでは

なんとも可愛らしい様子で喜ぶ姿が

世界に拡散され

 

ネイサンが、、コロナを退治してくれそうなヒーローのようなのに対して

コロナでささくれだった心を癒やしてくれる

天使のような優真です!

 

まさに、愛すべきスターの誕生☆ 

 

 

しかし

その裏にあった父子の壮絶なドラマは

あまり語られてはきませんでした。

 

世界選手権が終わったあとに

村上信五∞#情熱の鼓動』という番組で

おそらく初めて父が顔出しでインタビューに答えていましたね。

 

父の病気については

つい最近までほとんど語られることはありませんでした。

 

父が病気で指導を受けられなかったことは

操先生の帯同が続いていたこと。

国内大会に復帰した正和コーチが杖をついていたことからわかることでしたし

隠されていたというわけでもないでしょうが

指導に復帰されてからは

インタビューでも少しずつは話されてきたようですが

病名が出てくるようになったのは、本当に今年に入ってからという位、最近のことのように思います。

 

番組内で意外なおちゃめな父の姿が微笑ましく思えたと同時に

父は、病気をした自身の苦しみについては

一切触れることがなかった事に

鍵山正和という元トップアスリートの強さと誇りを感じたのでした。

 

『昭和』

という言葉がいかにも、古くさい

ネガティブなことに使われがちな昨今ですが…

 

古き良き昭和の男

鍵山正和の男気

ジェンダーレスの時代ですがあえて…)

そんなものも感じます。

(私も昭和の人間ですから💦)

 

 

なにはともあれ…

結果として、父の病気があったことで、優真が精神的に成長した事は良かったことなのですが…

 

当時の父の気持ちとしては

 

「そばにいてあげたかった」

 

それだけだったようですね。

 

 

今だに残る麻痺の様子などを見るにつけ

命に関わるような事態だったことは想像に難くありません。

 

退院後は、

杖を使いつながらもしっかりと歩き

リンクでの指導も続け

国内の試合には帯同してきたんですよね。

 

去年より見るたびに歩く速度は早くなり

回復して来ていることがわかります。

 

リハビリというのはとにかく辛いもの。

 

私自身も肩の手術を体験したが

手術前の痛みから開放されると思いきや

動かなくなったものを動かすためのリハビリは

時に涙を流したり、呼吸が苦しくなるほどの痛みを伴った。

急激に良くなるわけでもなく一進一退

先が見えない事で精神的に追い詰められることもある。

 

私は比較にならないくらい大したことないんですけど…そんな私でも辛かった。

(昔、見た大ちゃんのリハビリを頑張る姿などを思いながら怪我をしたアスリート気分で乗り切りましたけどね。)

 

 

スケーター鍵山正和の姿は 

残っている映像によって見ることができるが

ジャンプのテクニックが素晴らしいだけでなく

優真が父親譲りと言われる、伸びやかなスピード感のあるスケーティングは秀逸で

なぜこんな素晴らしいスケーターのことを知らなかったのだろうかと思うほど…

(当時は女子全盛で男子は放送すらろくになかったから仕方がないのですが)

 

どれほどの努力で身につけたものか…

素人万年初心者スケーターの私からしてみれば

想像すらできない。

 

年齢と共に衰えるものはある

選手としての寿命は特に短いが

 

倒れる前の正和コーチは

スケート靴を履いて、氷上で指導していたはずですよね。

小さな優真が、お父さんが氷上ですいすい滑る姿に

自分もやってみたいと憧れた

そんな人が

自由自在に氷の上を飛び舞っていた人が

スケート靴すら履けず

陸を歩くことすらままならなくなったのです。

 

どれほど無念を感じたのだろうと

察するにあまりあります。

 

しかし、

父は、そんな苦悩を語ることはなく

ただただ息子のそばについていてやりたかったと…

 

 

トップアスリートの不屈の精神と

息子への愛情で…

辛いリハビリを乗り越えて来られたんだと思います。

 

 

コロナ禍の海外遠征

日本より感染者の多い海外

バブル方式でも危険は伴う

まして、基礎疾患のある父にはリスクが高い

それでも

そばにいてあげたい!

その自身の願いを叶えたのが

今回の帯同だったのでしょう。

 

優真は強かった!

闘争心を鼓舞するわけでもなく

自然体で

お父さんにもらった教えのひとつひとつを

大切に

やってきた努力は嘘をつかない!

 

そして

お父さんがここにいる!

 

世界選手権銀メダルという大きな成果は

苦労してきた父子へのご褒美だ!

 

でも終わりではない。

 

 

どんなスケーターになってほしいですか?

という質問に父は答えました。

 

「極めてほしいですね。」

 

自分のかなえられなかった夢とか

メダルとかそんなことではない

職人気質の元スケーターらしい夢ですね。

 

 

鍵山正和というスケーターも

氷の上を、雲の上のように 

軽やかにまるで翼がついているかのようなスケーティングをしていました。

 

氷の上を飛べなくなった父の翼を

息子はそっと拾って身につけた。

 

空港での移動に車椅子を使われているのは

歩行の遅い父が周りに迷惑をかけないためでしょうが、

写真が後ろ姿なのは、

自然な姿にカメラマンがおもわずシャッターを押してしまったからでしょう。

正面からはきっと撮らせてくれなかったでしょうしね。

 

その父子の姿を見ていると

 

「お父さんの翼をつけたから僕の翼は誰よりも高く強く遠くまで飛べるよ!

お父さんも一緒に飛べるくらいにね!」

 

そう言っているように見えます。

 

 

「よかったな。でもこれからだぞ!」

 

 

父子鷹の旅はまだ始まったばかり…

 

 

#鍵山優真

#鍵山正和